香川院長ブログ

ノロウイルス

2015.12.20更新

noro

みなさんご存じのように、冬はノロウイルスの流行シーズンです。
癒しの森内科にも嘔吐 下痢 熱発を訴えられていらっしゃる患者さんが
多いです。
中には家族全員が順番に同じような症状になったとおっしゃる患者さんも
いらっしゃいます。
たぶんノロウイルスが原因ですね!と説明しますと、患者さんご本人も
やっぱりそうですか!と苦笑いされます。
ただ確定診断がついているわけではないので、病名としては”感染性腸炎”と
いうことになります。
実はノロウイルスをチェックするキットはすでに存在しています。
キットを使って便の検査をすれば15分くらいで結果がでますので、本当にノロウイルスに
感染しているかどうかは一応はわかります。しかし3歳未満と65歳以上の患者さんに
しか保険適応にはなりません。(正確には悪性腫瘍の患者さんや臓器移植後の患者さんも適応です)
つまりどうしても調べたければ自費となります。なぜ保険が効かないかというと
ノロウイルスと診断されたところで、特別な治療法がないからです。
整腸剤や吐き気止めを処方して、少しずつでも水分摂取していただくのが治療となります。
少しでも水分をとると吐いてしまうような場合は点滴が必要と なります。さらに重症化すれば
入院加療となりますが、そこまで悪化する方はそうはいないようです。

患者さんに”人にうつりますか?”とよく質問されます。答えは”yes ”です。
感染力はインフルエンザウイルスの1000倍と強力ですので、次々に伝搬します。
特に患者さんの吐瀉物や便を処理するときに経口感染することが多いです。マスク 手袋は必須ですね。
患者さんがトイレで嘔吐したり下痢したときには蓋をあけたままでそのまま流さずに、蓋をしめてから
流すなどしたほうが、後の人が感染するリスクは少しは減少すると思われます。
本来は排便の度に、嘔吐の度に次亜塩素酸で消毒したほうがいいのですが、家庭ではなかなか
できませんよね。

”いつから仕事に行っていいのですか?”という質問にも答えが難しいのです。
実はノロウイルスによる感染性腸炎は、学校保健安全法の中で学校感染症に指定されていないため、
法律では特に出席停止期間は定められていません。これは社会人も同じで、法律ではノロウイルス
による出勤停止期間は決められていません。
しかもやっかいなことに、ご本人が元気になっても(つまり嘔吐 下痢がおさまって普通に食事ができるように
なっていても)便からは3週間くらいはノロウイルスが排出され続けています。
つまり、元気になっていてもまだ3週間くらいは人にうつす可能性があるのです。
だからといって3週間も仕事を休んでくださいとは言えませんよね。
そこで、”嘔吐や下痢がおさまれば出勤していいですよ” とお答えしています。
(調理に従事されている患者さんは別ですが・・・。)

どんな病気もそうですが、予防に勝る治療はありません。
まめなうがい、手洗い、火の通っていないものや古いものは食べない、規則正しい生活をして睡眠時間は
十分にとる。
以上を心掛けることが最も大切ですね!

投稿者: 稲城癒しの森内野クリニック

感染制御医

2015.12.08更新

saikin

みなさんは感染制御医という資格をご存じですか?
本当はICD というのですが、カタカナではインフェクションコントロールドクターという
ことになります。
あまりいい訳がないのですが、日本語では一応感染制御医ということになっています。
ドクターが取得することができる資格の一つで、感染症に関して造詣が深いドクターと
いうことになっています。
専門医とちがって取得することは比較的容易です。
ぼくも前職の病院で感染委員会に所属していたこともあり、ICDの資格をもっています。
しかし、せっかく取得した資格ですが維持するためには条件があり、講習を一定回数受けなければいけません。
そこで、先日ワクチンの講習を受けてきました。
見回すと、講習中に寝ている先生が1/4~1/3くらいはいらっしゃいましたが、ぼくには大変勉強になる
内容でした。

ワクチン接種というといろいろなことをおっしゃる方がいらっしゃいますが、まずはワクチンによる
輝かしい歴史の紹介がありました。例えばHibワクチンの普及のおかげでインフルエンザ桿菌による
髄膜炎はほぼ0%になりました。また、小児の肺炎球菌ワクチンの普及によって髄膜炎が70%減少したとの
ことでした。そしてポリオの発症は現在は0%になっています。
しかしワクチン接種の影の部分も当然あります。たとえばHibワクチン では接種の副反応によって7名の方が亡くなられているとのことでした。また、ポリオは以前は経口の生ワクチンであり、1/100万人 の確率ではありましたがワクチン接種が原因で本当にポリオに罹患してしまう方がいらっしゃいました。
現在大勢の方が接種しているインフルエンザワクチンの接種にて重篤な副反応がおきる確率は
0.0002%とのことでした。もちろんワクチンの副反応は0%であることにこしたことはないのですが
それを達成するのはかなり困難であるとの見解も述べていました。

次に今後開発されるワクチンの講演がありました。
例えばすでに海外では実用化されていますが、経鼻投与のインフルエンザワクチンが日本でもいずれ
発売されるでしょう。でも価格は高額になりそうです。
それ以外だと、ノロウイルスのワクチン RSウイルス 帯状疱疹のワクチン  デング熱 エイズ マラリア
などのグローバルに普及するであろうワクチンがもうすぐ実用化するとの内容でした。

なかでも日本ではノロウイルスワクチンが最も必要ではないかと思われるのですが、数社が開発しており
すでにphase2は終了しているようです。ノロウイルスはインフルエンザの1000倍の感染力があり
有効な治療法もありません。冬の今頃に流行します。また、今年はGⅡ17という新しい型が出現しており大流行のきざしがあります。
ウイルスが変異を繰り返しても有効性を維持できるかどうかは未知数ですが、もしノロウイルス
ワクチンが開発されれば、朗報であることはまちがいありません。
しかし、ワクチンを接種しても有効期間は2年程度とのことです。つまり2年に1回は接種しなくては
ならないのでそれはそれで大変かもしれません。

これからもウイルスと人類の闘いは続くでしょう。
ただ、予防こそが最上にして最高の医療であるのはまちがいありません。
ワクチン接種は予防医療の一つの柱です。
副反応がなく、有効性が高いワクチン開発が今後も続くことを期待します。

投稿者: 稲城癒しの森内野クリニック