広報いなぎ
2016.08.18更新
今回広報いなぎにぼくの原稿を載せていただきました。
医師会の活動の一環ですが、このブログにも同じ内容を載せます
睡眠時無呼吸症候群
みなさんは、ご家族にいびきがうるさいと言われたことはありませんか?
昼間とてつもなく眠くなったりすることはありませんか?
当てはまる方はもしかしたら睡眠時無呼吸症候群(SAS)かもしれません。
2003年の山陽新幹線の運転手の居眠り事故で有名になった疾患です。
新幹線だけではありません。米国バージニア州の調査結果(1988年)によると、SASの
患者さんの交通事故発生率は、健常者の約7倍だったことが報告されています。
またSASの重症度が増すにつれて、事故率が高くなっていることも明らかになっています。
多くの場合は気道の閉塞で起きる“閉塞性睡眠時無呼吸症候群”が原因です。
日本人では2~4%の方が罹患していると推測されています(300万人くらいです)
以前は肥満の方がなる疾患と考えられていましたが、最近ではそうでもないことが
わかってきました。やせていてもあごの小さい方は気道が狭くなりやすく、
日本人は欧米人に比べて頻度が高いようです。
あごの形態のほかに、扁桃の肥大、アデノイド(咽頭扁桃)の肥大が原因となって
いることもあります。
夜間の無呼吸が続くと、全身が低酸素状態になりますから
放置するのは好ましくありません。
中等度~重度のSASの患者さんは高血圧を合併する頻度がそうでない
患者さんにくらべて2.9倍になります。糖尿病は1.6倍になります。
心不全は2.5倍に、また脳卒中はなんと3.3倍に増加すると報告されています。
さらに中等度~重度のSASの患者さんが未治療で放置していた場合、8年後には38%の方が亡くなったという報告もあります(He J, et al : Chest,94 , 9-14, 1988.)。
つまりSASの患者さんの平均寿命はかなり短くなります。
SASの方が病死する場合、その主な原因は心臓疾患(心筋梗塞 心不全 不整脈など)と
脳血管疾患です。しかし、きちんとCPAP(持続陽圧呼吸)治療を受けていた患者さんは
SASでない患者さんとくらべても寿命に差はありませんでした
(Marin JM, et al:Lancet. 2005 Mar 19-25:365(9464):1046-53.)
疑わしいと思ったらまずは簡易検査をうけることをおすすめします。
簡単な検査でご自宅で受けることが可能です。
結果によってはさらに詳しい検査が必要になることもありますし、
ただちにCPAPなどの治療の適応になることもあります。
軽度~中等度の患者さんはマウスピースが有効である場合もあります。
治療の継続はなかなか難しい場合もあるのですが、
担当医とまめに相談して問題点をひとつずつ解決することが大切です。
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