糖尿病の食事療法
2016.03.10更新
糖尿病は当院で、最も力をいれている疾患の一つです。
さほど自覚症状はないのですが、知らない間にからだを蝕んでいき恐ろしい
合併症を引き起こす疾患です。
糖尿病の患者さんは増加の一途を辿っています。
糖尿病の患者さんが、合併症と無縁の生活を送れるか否かで
必要となる医療費は桁違いになります。
糖尿病の適切な治療は国益につながると言っても過言ではないでしょう。
先日北里研究所付属病院の山田先生のご講演を拝聴する機会がありました。
糖質制限食、いわゆるロカボ(low-carbohydrate)食はこれまで40年間常識とされてきた
糖尿病の食事療法を根底から覆す画期的なものであると、熱弁をふるっておられました。
現在でも糖尿病治療のガイドラインにはカロリー制限食の記載があります。
理想体重をBMIから計算し、概ね30倍したカロリー値が理想であるというものです。
ロカボ食ではカロリー制限は不要です!
驚くべきことに脂質の制限も不要です!(トランス脂肪酸と過酸化脂質はだめだそうですが)
ですから、肉 魚 卵 いくらでも食べていいのです。
お酒も蒸留酒(焼酎 ウイスキー etc)なら全然OKだそうです。
むしろ積極的に脂質を摂ったほうが血糖値は下がるというデータを提示されていました。
まさに ”eat butter!” ですね。
制限すべきものは糖質です。糖質には当然糖類も含まれます。
具体的には1食あたりの糖質を20g~40g程度に制限するということです。
1食あたりご飯茶わん半分くらいになります。トーストだと6枚切りで1枚くらいです。
うどんは半玉、バゲットだと2切れくらいです。
その他イモ類 かぼちゃ 大豆以外の豆類 果物 菓子類(せんべいなどの甘くないものも含みます)
などが制限する対象となります。
糖質の多い日本酒やビールも制限が必要ですが、ワインは糖質は少ないのである程度は可とのことでした。
脂っこいものは避けてください!カロリーは1400Kcalに制限してください。
卵は1日1個までにしてください!肉の摂りすぎに気をつけてください。
いままで当然のように言われてきた栄養指導の概念をまさに根底から覆すことができるかも
しれません。
ただこのロカボ食は現在のところ糖尿病学会全体のコンセンサスを得るまでには至っていません。
否定的な見解の先生方も少なからずいらっしゃるようです。
本当に正しいことはなんなのか?いまだ模索中なのかもしれませんが、
少なくとも40年前から当然のようにおこなわれてきた糖尿病の患者さんに対する
栄養指導が、すべて正しかったということはなさそうです。
糖尿病治療でのロカボ食を全面的に肯定するには現段階ではまだ早いかもしれません。
ぼくはすでに患者さんに、
①糖質制限が重要!(糖質と言うだけでは甘いものだけだと勘違いされる
方が多いので、まったく同じではないのですが、炭水化物を制限してくださいと言い換えることもあります)
②カロリー制限は無用!
③肉 魚 卵 脂質 は普通に食べてまったく問題ありません と
説明しています。
実際にそれで血糖コントロールが改善される方が多く、手ごたえを感じています。
ロカボ食が糖尿病患者さんのQOLやひいては生命予後も大きく改善してくれるかもしれません。
今後の研究の進展に期待したいものです。
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