インフルエンザの治療
2016.02.04更新
インフルエンザの患者さんがかなり増えています。
今回は治療についてです。
みなさんもご存じかと思いますが、インフルエンザは発症して48時間以内であれば
治療薬の適応となります。
いわゆるノイラミニダーゼ 阻害薬というもので、現在4種類が処方可能です。
ノイラミニダーゼ阻害薬は、ウイルスそのものを破壊する薬ではありません。
ウイルスの増殖を抑制するくすりです。
インフルエンザウイルスの増殖は感染後2~3日でピークに達して、その後は自然経過でも
減少していきます。
ですからすでに減少期にはいっている患者さん(つまり発症後48時間以上経過した患者さん)
にノイラミニダーゼ阻害薬を投与してもほとんど効果がないのです。
発熱で来院された患者さんに、いつから熱がありますか? 昨日の何時ころから熱がありますか?
としつこくきくのは発症してからの時間経過が、検査や治療の方針に大きく影響するからなのです。
治療薬は
内服薬として有名なタミフル 吸入薬としては リレンザ イナビル
そして点滴薬としてラピアクタがあります。
当院では点滴がお嫌いな患者さんでなければラピアクタの点滴をおすすめしています。
理由はいくつかあります。
①効果発現がはやいことが見込まれる。
第54回臨床ウイルス学会で川崎医科大学小児科のグループが発表したデータでは
タミフルに比べてラピアクタ投与群でのほうが解熱までの時間が有意に短かったと報告されています。
また、Chemotherapy. 2013;59(5):373-8. にはラピアクタを点滴した患者さんが、タミフルの内服やリレンザ
を吸入した患者さんよりも有意に早く解熱したことが報告されています。
②確実に投与可能である
点滴治療は吸入薬に比べて確実です。かなり静脈が細い患者さんの場合は点滴が困難な場合もあるので
おすすめはしませんが、そうでなければ点滴治療は吸入薬に比べて確実です。吸入薬の場合はどうしても
きちんと吸入できたのかどうか不安が残ります。
③1回15分間の点滴で治療が完了する
タミフルは1日2錠5日間内服しなければいけません。リレンザも1日2回5日間吸入しなければいけません。
内服や吸入を忘れることもあるでしょうし、患者さんが途中でやめてしまう可能性もあります。
しかし、ラピアクタの点滴であれば15分間の点滴で治療が完了します。そして重症例であれば
追加点滴をおこなうことも可能です。
以上の理由で当院では感染初期のインフルエンザの患者さんの治療は
ラピアクタの点滴を第一選択としています。
しかしラピアクタにも欠点がないわけではありません。
①他剤とくらべて解熱までの時間がはやいという報告がある一方で、ほとんどかわらないという
データもある
②副作用がないわけではない(嘔吐 下痢 白血球減少 etc)
③腎機能が低下している患者さんには使用不可
④多剤と比較してやや高価(3割負担で500円程度の負担増になります)
また混雑時には患者さんがご希望されてもマンパワー的に余裕がなく点滴治療は不可ということもあります。
いずれにしても、インフルエンザの治療に際して選択肢がいくつかあるということはとてもいいことです。
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