香川院長ブログ

インフルエンザの診断

2016.01.24更新

tumura

インフルエンザの患者さんが徐々に増えてきました。
癒しの森クリニックでも先週は毎日1人~2人くらいの患者さんがインフルエンザ迅速キット
で陽性でした。
いつも思うのですが、インフルエンザかそうでないかを診断するのは医師の判断です。
インフルエンザの迅速診断キットが診断するわけではありません。
なぜそう思うかと言うと、キットの診断は万能ではないからです。

公表されているデータでは、インフルエンザ迅速診断キットの感度は概ね72%程度
特異度は92%程度です。(文献によってはもっと低いです!)
感度は意外と低いのです。
感度が低いということは、本当はインフルエンザなのに、インフルエンザではないとされてしまう
患者さんが3割程度はいらっしゃるということです。
逆に特異度はかなり高いので、キットの診断で陽性であった患者さんが
実はインフルエンザではなかったということはほとんどないということになります。

ですからどう考えてもインフルエンザだと思われる患者さんが、迅速診断キットの結果では陰性
となることが結構あります。
しかしそういう患者さんに、タミフルやイナビルを処方するのはなかなか難しいですよね。
ましてや、当院では第一選択としているラピアクタの点滴はまずできません。
(薬代もばかになりませんしね)

そこでかなりインフルエンザが疑われる患者さんで、迅速診断キットが陰性であった
方には漢方薬である麻黄湯を処方することにしています。
最近の研究では小児科クリニックにおける臨床試験でインフルエンザA B を発症した小児に対して
タミフルと麻黄湯を投与したグループに分け、インフルエンザウイルスが消失するまでの
時間を比較した結果、ほぼ同等であることが示されました。

また、日本臨床内科医会インフルエンザ研究班が行った2006年~2007年の臨床データでも、タミフル
リレンザ、麻黄湯では投与開始から解熱までの時間に差はみられませんでした。
麻黄湯は、タミフルやイナビルのようにインフルエンザウイルスに直接作用するわけではなく、
気道の上皮細胞の炎症を抑え体の防御機能を高めることで
ウイルスに抵抗すると考えられいます。つまりより生理的な作用機序ですよね。
漢方らしいともいえます。
小児から高齢者まで幅広く処方可能であるのですが、漢方用語での”実証”の患者さんに
有効ということになっています。
実証の患者さんとは比較的体力があり、病気に対する抵抗力がある方です。
虚証はその逆になります。しかしインフルエンザに罹患したときは
麻黄湯は虚証の患者さんにも有効とされています。

いずれにしても、インフルエンザの治療にいろいろな選択肢があるのは
とてもいいことですよね。

もっともインフルエンザにかからないのが一番であるのは
言うまでもありません。
予防注射はもう終了しましたが、うがい 手洗い マスク 睡眠で
予防に努めていただきたいと思います。

投稿者: 稲城癒しの森内野クリニック